はじめまして、こんにちは。ティーヌと申します。
ご存知ない方がほとんどだと思いますので、少し自己紹介したいと思います。
「読書サロン」という、ゲイやレズビアンやトランスジェンダーなど、いわゆるセクシュアル・マイノリティが登場する小説を応援する会を主宰しています。主な活動は、毎月都内で開催している読書会です。それから、TRPのプライドウィークでは、紀伊國屋書店新宿本店と横浜ららぽーと店で開催した「LGBTを知る100冊!」と、丸善ジュンク堂書店渋谷店で開催した「LGBTを考える70冊!」の選書をしています。
文学研究者でも、文芸担当の書店員でもありません。すごく文壇に詳しいわけでもありません。たぶん平均よりちょっとだけ、意識的に本を読むようにしている人です。消費者の一人として、「こんな素敵な本あったよー、みんなも読んでー」と言っているだけですので、どうぞ温かい目でご覧いただければと思います。

さて、この文章は、普段あんまり本を読まない、あんまりどころか全然、小説を読まない人に向けて書いています。はじめて、自分で小説を選んで読んでみようかなと思っている人を、読者として想定しています。
かくいう私も、小学校高学年から高校まで、ほとんど小説を読みませんでした。
小学校高学年向けぐらいから、なぜか、私の身の回りのほとんどの小説において、「異性愛」とか「家族愛」要素が色濃くなったんです。女の子向けの本、男の子向けの本という分類も登場してきました。私は、そのあたりの行間というか慣習というか空気がですね、まったく理解できない人間でして、「え、そんな突然現れた男を好きになるの? は、なんで? いつも一緒にいる女友達の方が最高に素敵なんだけど!」と怒り狂ったり、「主人公の男が、突然、この女を好きになったけど全く理由が書かれていない。難解な文章だ……」と頭をひねっていました。小説の中には、男と男、女と女にはいろいろな経験の共有や関係性が書いてあるのに、男と女の関係はきちんと文字になって書かれていないことが多かったんです。推測もできず、物語が楽しめない、という状態に陥っていました。なんだか、小説を読むのが嫌になってしまったんです。

一応、同級生や先生にすすめられて、星新一とか司馬遼太郎とかもいくつか読んではいたのですが、いまいちピンとこなくて、次に読みたい本を見つけることができませんでした。
「次に読みたい本がない」っていうのも、大問題なんです。何か用事があって1回本屋に行くと、「あ、これ、続き出てたんだ!」とか言って、ポイントカードも作っちゃったりして、しばらくいそいそと本屋に通ったりするんですが、何かの理由で途切れると、ぱったり、小説を読まなかったりする。もはや楽しかった読書の思い出も薄れてきて、あー、いつもと違うことするのめんどくさいなー、と思う。映画館とかも、だいたいそのパターン。
そんな私が紹介する本ですので、周りのみんなが読んでいたり、有名な作品ではないかもしれません。それでも、みなさんが「この小説は読んでみたいな」と思えるように、いろんな種類の本を取り上げたいと思います。そして、「これが読み終わったら、次はこれ読んでみよう」と思えるように、似たような本もいくつか、紹介していきたいと思います。どうぞ、よろしくおねがいします。

さて、初回に紹介したいのは、高殿円(たかどの まどか)さんの『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』(早川書房)です。文庫版もありますし、一蘭のラーメンより安い。
お気づきかと思いますが、そう、あれあれ。コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」のパロディです。まあ、いわゆる二次創作、なんですが、なぜか「シャーロック・ホームズ」シリーズでは、「パスティーシュ」とフランス語で言います。「シャーロック・ホームズ」のパスティーシュは、世界中で大量に作られていまして、文学界で大きなジャンルを築いていると言っても、過言ではありません。
え、オリジナルの「シャーロック・ホームズ」すら読んだことないのに、パロディなんて読んでいいの? と思うかもしれませんが、大丈夫。読書は、常に、あなたのもの。二次創作から読んでも、途中から読んでも、犯人を確認してから読み始めても、いいんです。
『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』の舞台は、オリンピック開催が迫った、2012年のイギリス、ロンドン。名探偵シャーリー・ホームズ(女)と、アフガニスタン帰りの軍医ジョー・ワトソン(女)が、友人(女)の紹介で出会い、ルームシェアをするところから話が始まります。すっごく変わった名探偵と、そのすっごく変わった名探偵と一緒に仕事ができる変な助手の2人で、警察もお手上げの難事件に挑みます。

この小説の何がポイントかと言いますと、ずばり、全部女。主人公も、犯人も、警察も全部女! 犯行動機も、凶器ももちろん「女ならでは」。
この物語では、すべての女が、過去に色々あったとしても、今、自ら選択し、自ら行動し、主体的に生きようともがいているんです。フェミニズム、って言うやつです。
表紙も大変可愛いです。可愛いらしい表紙が苦手な方は、店頭で買って「カバーつけてください」って言えばいいのです(最近は、言わなくてもカバーかけてくれるお店がほとんどです)。万が一、何を読んでいるのかと聞かれたら、「シャーロック・ホームズのパスティーシュをちょっと、ね」なーんて言ってみたりしてもいい。
著者の高殿円さんは、ドラマの原作とかも手がけている人気作家で、作品も多いです。同じ著者で作品を探してみるのも良し。

高殿円『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』(早川書房)

女の子たちが活躍するやつで、もうちょっと短い話が良い、という方には、王谷晶『完璧じゃない、あたしたち』がおすすめ。23の短編が収録されています。推薦文もとーっても素敵です。「女たちの人生が、たった一度、どうしようもなく変わってしまう、美しくて、怖くて、きらきらした瞬間が、ここには詰まっている。女の人生を変えるのは男だなんて、誰が決めたのさ?(翻訳家・岸本佐知子)」まさに、女の物語。

王谷晶『完璧じゃない、あたしたち』(ポプラ社)

文庫でお探しの方には、是非、フランチェスカ・リア・ブロック『〝少女神〟第9号』を。翻訳小説ですが、とってもポップで、痛いほどに赤裸々で、濃ゆい短編が9話収録されています。根強いファンの多い、名作です。

フランチェスカ・リア・ブロック『“少女神”第9号』(ちくま文庫)

いかがでしょうか。気になるキーワードがひとつでもあったら嬉しいです。では、また次回。

■ティーヌ
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ノンセクシャル、アセクシャル など、セクシャル・マイノリティと呼ばれる人々が登場する小説を応援する会、読書サロンを主宰。月に1回、都内で読書会を開催。