20年以上にわたってニューヨークで暮らし、アメリカから日本を、そして世界を観てきたジャーナリスト・北丸雄二さん。そこで得た知見をもとに、「LGBT」で人生を読み解きます。

 多忙につき、更新が遅れて大変申し訳ありませんでした。今回は番外編として、6月30日にニューヨーク・マンハッタンで行われたストーンウォール50周年記念の「ワールド・プライド」兼「NYCプライド・マーチ」を写真で綴りましょう。

 マンハッタンのダウンタウンであるグリニッジ・ヴィレッジのゲイバー「ストーンウォール・イン」への警察の摘発をきっかけに、現代ゲイ人権運動(すでに書いていますが、当時の「ゲイ」とは全ての性的少数者を指す呼び名でした)の嚆矢とされる「ストーンウォール・インの反乱」が起きたのは1969年6月28日未明でした。翌年から早速、これを記念した人権解放のための抗議の政治集会と示威行進が毎年行われるようになったのです。それから50年、政治行進はかなり様変わりして、この間に獲得した結婚や雇用などでの平等や人権の回復を寿ぐ「祭典」の要素が強まっています。もっとも、LGBTQの中でもその“格差”は顕在しています。トランスジェンダーの人々への暴力事犯や差別事例は依然として、というよりトランプ時代になってむしろより激化しており、今回の「プライド」でもトランスジェンダーの人たちの政治マーチが別に独立して行われるということになりました。そのことについては別に書くことにします。

 さて、ニューヨーク市では毎年6月最終日曜日にこの「プライド・マーチ」が行われるのですが、今年はこの日のために米国内外からニューヨーク市を訪れたのは予想の300万人を上回る500万人でした。全部が全部プライド目当ての観光客というわけでもないでしょうが、しかし6月のマンハッタンは例年になくとんでもなくゲイゲイしていたのは確かです。いつもの年ならほぼダウンタウンに集中するLGBTQフレンドリーのシンボル「レインボー」カラーは、ミッドタウンやアップタウンにまで溢れ出していました。今や全米でのLGBTQコミュニティの潜在購買力(ピンクマネー)は年間9,170億ドル(100兆円)とさえ言われます。

 街なかだけではありません。あのマウスウォッシュの「リステリン」のボトルがレインボーに変わっていました。日本にも進出したグルメ・ハンバーガーの「シェイクシャック」は虹色に輝くスプリンクルを振り掛けた「プライド・シェイク」を売り出しました。レストランのメニューには「ラヴ・サラダ」だとか「レインボー・サンドイッチ」とかの名前が並びました。ラルフ・ローレンやマイケル・コーはレインボーがテーマのアウターやインナーをデザインして並べていました。これを見た英紙『ザ・ガーディアン』は「レインボー・ブランドの資本主義に魂を売ったプライド」という論評を掲載しました。もっとも、LGBTQコミュニティもバカじゃないので、付け焼き刃的にピンクマネーを狙うだけのブランドにはしっぺ返しを食らわせられるほどのリサーチ力を持っています。そのための企業評価が、雇用の多様性や福利厚生などを調べ上げて毎年発表されているのです。

 例えば今回の「プライド商法」に関しても、米国「イケア」はいつものブルーのショッピングバッグをレインボーに変えて3ドル99で売り、その収益の全てを世界最大のLGBTQ人権団体「HRC」基金に寄付して教育プログラムに使ってもらうそうです。

「IKEA」のショッピングバッグもレインボーに。売り上げはHRC基金に寄付された。

 全米量販店チェーンの「ターゲット」は90品目を特別にプライド・ヴァージョンにして10万ドル(1,000万円強)を教育現場でのLGBTQ差別解消に尽力する「GLSEN」に寄付しました。 「AT&T」は長年パートナーシップを築いているLGBTQ青少年の自殺防止プログラム団体「トレヴァー・プロジェクト」にテキストやチャットでのカウンセリング・サーヴィスを提供し、さらに今年も100万ドル(1億円強)以上を寄付したいとしています。

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