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株式会社セールスフォース・ジャパン

 

株式会社セールスフォース・ジャパンの従業員リソースグループ
「Outforce」で活動するLGBTQ+当事者とアライが語る

社会を変えていくために何をするのか?

 

 

 

以前からTOKYO RAINBOW PRIDE(以下TRP)に協賛し、様々なLGBTQ+支援策を積極的に展開している株式会社セールスフォース・ジャパン。その活動の多くは「Outforce」と名付けられたLGBTQ+当事者社員とアライ社員による従業員リソースグループによって進められている。他社と比べて、際立って活動的なこのグループで活躍するメンバーに、取り組みへの思いや、背景について座談会形式で語ってもらった。

司会
タブロー事業 ビジネス・バリュー・サービス ディレクター
嶋 ピーター

出席者
トレイルヘッドアカデミー部門 インストラクター
伊藤 龍玄

タレントエクスペリエンス グローバルオンボーディング マネージャー
岡林 薫

トレイルヘッドアカデミー部門 トレイルヘッドアカウントエクゼクティブ
菊妻 亮太

マーケティング本部 シニアイベントマーケティングスペシャリスト
山口 芽衣

取材・文/宇田川しい

3000人の当事者/アライ・グループが生む心理的安全性

ピーター 龍玄さんはゲイ当事者で3年前に新卒で入社したわけだけど、Outforceの存在は知っていた?

龍玄 社外向けの記事を就活生の時に読んで知っていましたし、内定後にはTRPに行って、Outforceってこんなことやってるんだというのを目の当たりにしました。志望動機の中でもこの存在は大きかったですね。実際に入ってみて、こうした活動をここまで精力的に出来る会社はないなと思いました。セールスフォース・ジャパンには、製品の1%、株式の1%、就業時間の1%をコミュニティへの貢献活動に使うという「1-1-1モデル」があります。この存在が非常に大きいのではないでしょうか。

ピーター 芽衣さんと亮太さんはアライですよね。アライとしてはセールスフォース・ジャパンについてどんなふうに感じているんだろう。

芽衣 もともと、社会に還元する企業、従業員を大切にする企業に入りたいと思っていたので、Outforce自体も入社前から知っていました。入社後も、当事者・非当事者に関わらず誰にとっても暮らしやすい社会を作りたいという思いがあったので、Outforceの活動には注目していましたね。

亮太 僕は5年前に入社した時には知らなかったんです。LGBTQ+についてもよく分かっていなかった。その後、知人がXジェンダーであることを知ったこともあってLGBTQ+や女性の権利について考えるようになりました。

薫 Outforce Japanが立ち上がったのも亮太さんが入社する少し前くらいですね。ちょうどその頃からこうした問題に焦点が当り始めたということはあると思います。立ち上げ当初のメンバーは3人でした。今はすでに1000人以上になっています。これは従業員数の3分の1に当たります。めざましい成長です。

亮太 ここ2年くらいは、人権や平等といった話題をとてもカジュアルに口に出来るようになったなという気がします。

ピーター 私は当事者として、以前にいた企業でもLGBTQ+について取り組んでいたけれど、セールスフォース・ジャパンのような安心感というのはなかったね。当事者グループの中では打ち解けて話ができたけど、この会社ほどどこにいても自分が自分でいられるということはなかった。それはやはり当事者とアライであると表明している従業員が3分の1いるという安心感だと思う。

龍玄 入社当初はカミングアウトするか迷いましたが、Outforceが継続的に活動をしていることが安心感になってカミングアウトすることにしました。

ピーター 龍玄さんは、新卒で入った会社にすでにこうしたグループがあったというのは幸せだよね(笑)。芽衣さんは他社を経験してるわけですけど、入社してどう感じました?

芽衣 以前、勤めていた企業にもLGBTQ+についての取り組みはありました。ただ、それは人事主導の施策が多くて、人事として制度を整えますよというものでした。もちろん制度を作ることも大切なんですが、そこに当事者の人たちも巻き込まれていたのかというとそうではなかったですね。

ピーター 人事から施策が降ってくるだけの段階では、当事者は安心して声を上げられない。

芽衣  当事者のグループはあったんですが、Outforceのようなアライと一緒になった大きなグループはありませんでした。そうすると人事としても誰にリーチすべきか分からない。

ピーター 当事者はいるとは思うんだけど、誰だか分からないっていう状態だね。セールスフォース・ジャパンの場合、人事から薫さんに「こんな施策をやろうと思ってるんですけど」って相談が来るんだよね。それが私の方にも振られて来て「そのルールじゃダメだよ」とか、「もっとこうした方がいい」とかって意見が出て、フィードバックを通じて制度が作られていく。当事者が安心して話せる。セーフスペースだから当事者が文句も安心して言える。だから変化しやすいんだよね。

誰にとっても自分ごとになるSOGIという概念

亮太 一方で、伸び代は残っているとも思うんですよ。LGBTQ+や女性などの問題をまだ自分ごととして考えられていない、こういう言い方をしていいのかわかりませんが「オジサン」たちもいる。

ピーター オジサンは分かってないっていう、それもステレオタイプだよ(笑)。

薫 でも、一面の事実でもあると思いますよ。

亮太 日本の男社会の中で育ってくるとそういう意識になるのは仕方ない面もあると思うんですよ。その辺をもっと開拓する必要があるんじゃないかな。

ピーター 確かに、「社員3000人=当事者とアライが3000人」になるのが理想だよね。だからOutforceのメンバー数は、まだ1000人とも言える。ただ、さっき言った「オジサンは」みたいな話は、逆に言うと「最近の若い人は」ということにもなるよね。昔は、例えば営業マンだったらスーツを着て、とか、指輪はカマボコ型だけとか、ピアスなんてとんでもないみたいな規範が強かった。最近はそういう規範は弱くなってるけど、今でも、「最近の若い人は」という人もいる。

亮太 そういう、「らしさ」、特に「男らしさ」というのがLGBTQ+や女性、障害を持つ人への差別に繋がっていると感じます。僕はシスジェンダーでヘテロセクシュアルの男として、男らしさからどう脱却するかに関心があります。

芽衣 シスヘテロ男性が中心にシステムや枠を作ってきた社会の中で、そういう枠組みを1つずつ変えて行こうとしてる時期だと感じます。さっきの「オジサン」の話につながると思いますが、「今はこういう時代だからLGBTQ+の人も大勢いる」みたいな発言を聞くことがあります。でも、本当は、昔からLGBTQ+は存在したし、実際に社会は多様だった。ただ、あなた方が見てこなかっただけでしょ、と言いたくなります。マイノリティや差別について知識はあっても自分ごとになっていない人も、まだまだいます。

ピーター そういう意味では、SOGIという言葉が一般化して来たのはいいことじゃないかな。性自認や性的指向の枠を表現する言葉の頭文字を並べたLGBTQ+と違って、SOGIはSexual Orientation & Gender Identityの略で「性的指向&性自認」という表現。Gender Identityは性自認の意味。これはすなわち、自分が女である、男であると感じて日常を暮らす人もいるし、あるいは女である、男であるがはっきりと分けられていないとも思っている人もいる。つまり、すべての人にGender Identityがある。だからSOGIと言った時にはすべての人にとって自分ごとなんだよね。LGBTQ+と言うと「自分はマイノリティじゃないから」と思う人もいるかもしれないけど、SOGIと言った時には誰にとっても自分ごとになってくる。

マイノリティの問題はマジョリティの側にこそ問題がある

芽衣 確かにSOGIという言葉によってGender Identityが可視化されつつあるのはいいことですよね。ただ私は、学生時代にアメリカのロサンゼルスにいてかなり先進的な取り組みをみて来たので、日本に帰って来て社会に出たら、まだまだシスヘテロの枠組みが強いなあと感じました。

薫 社会に出る前の段階でもシスヘテロ的な規範を押し付けられると、私はレズビアンの当事者として感じます。日本はランドセルの色が女子は赤、男子は黒って分けられている。もっとも私は黄色のランドセルにしましたけど(笑)。

龍玄 学生時代、友だちの女の子がアフリカに一人旅することになったんです。その時、周囲の反応が「女の子なのに大丈夫?」というものが多くて違和感を感じました。その子はとても勇敢で、心配ないと私は思ったんですけどね。

ピーター そういう枠を社会が作ってる。でも、その社会を誰が作ってるのかということだよね。

薫 社会を作っているのは私たち人です。ただ、政治家が作る法律や制度が上からかぶさってくるので、その影響は大きいですよ。もちろん政治家は私たち国民が選ぶのですが、政府の考えが国民の考えに比べて多様性に欠け硬直化しているために暮らしにくさに繋がっているんじゃないでしょうか。

ピーター そういうルールを作る人たちは、その前の世代の人たちが作ったルールに何の疑問も持たずに、それが正しい、安心な価値観だと思っているんだろうね。

亮太 日本で教育を受けると批判精神が育ちにくいですよ。おかしいと思った時にそれを口に出来ない。私も苦手でしたけど。セールスフォース・ジャパンにはきちんと批判できる空気があります。

また、LGBTQ+への差別はおかしいと声を上げると「おまえも当事者なのか」と言われたりもする。でもマイノリティの問題というのは、実はマジョリティの側にこそ問題があって、変わるべきはマジョリティなんです。まさにシスヘテロ男性である自分自身の問題なんだと、あるときに気付いて愕然としました。でも、やはり声を上げるとゲイだと思われそうで怖いという気持ちも正直ありました。

ピーター 当事者だと思われるとマイナスだと思っているわけだよね。

亮太 ゲイだと思われたくないという考えは、差別を内面化してしまっていたことの表れでしょう。

社会を変えるために、自らボールを投げてゆく

ピーター こういう現状を変えるために、どうしたらいいんだろう? 自分を変えなきゃいけないってことかな。

龍玄 以前、セールスフォース・ジャパンからトランスジェンダー支援の施策を発表した時に、いいことだなと思ってそれをツイートしたんです。そうしたら友人たちから「龍玄はトランスジェンダーだったの?」っていう反応があったんです。親しい友人たちだったので、いやそうじゃないんだよ、ということを詳しく一人一人に説明しました。やはり、そういうふうに自分や、自分の周りの人たちを変えていくことからしか社会は変えられないんじゃないでしょうか。

薫 アライの中には形だけのアライという人もいます。そういう人がアクティブ・アライになるきっかけって、周囲に当事者がいることを知ってというケースが多いと思うんです。だから個人が発信していくことは重要です。ただ、そういうことを話すこと自体に困難を感じる人も多い。話をしやすい雰囲気を作るためにはメディアがマスで発信してトピックを可視化することも重要です。そして、またメディアが発信するというのは個人の興味関心があるからということもあるので、個人の発信とメディアの発信が相関して進んでいくべきなのだと思います。

ピーター やはり自分からボールを投げないと始まらないということはありますよね。そうやってボールを投げる、発信する時にセールスフォース・ジャパンという企業、Outforceというグループにいることで、多くの人たちにボールが届く。相手を変えるとかそういうことを意識するわけではなく、自分の学んだことや感じたことを発信することがとても大切なのかな。

芽衣 アライだからこそ発信するべきという気持ちが私はありますね。差別されている当事者はすでに疲弊してるわけで、その当事者だけに声を上げろというのは残酷です。当事者性と当事者意識はまた別で、当事者でなくても当事者意識を持つことは出来ます。ただ、その時に当事者意識と当事者性を混同して、あたかも当事者についてすべて分かっているような態度を取るべきではないとも思います。「あなたの気持ちは分かりますよ」というようなことは気軽に言ってはいけない。分からないことをまずはきちんと認識することでアライとしての戦い方が出来るのではないでしょうか。これからも Outforceで、そんなふうにボールを投げ続けていきたいですね。