自動販売機で「はじめの一歩」を生み出し続けるチェリオ

チェリオの自動販売機

「のんでCHANGE!」自動販売機

「東京レインボープライド」に協賛して、今年で11年目を迎える国内飲料メーカーのチェリオグループ(以下 チェリオ)。関西、中部、沖縄エリアをメインに事業を展開しているチェリオは、事業を通じてLGBTQ+の認知拡大理解浸透に力を注いできた。今回は、マーケティング部の西尾友希さんに、チェリオの現在の取り組みと、啓蒙活動の意義について話を聞いた。


「アライシール」が社内から理解を広げるきっかけに

アライシールを貼ったスマートフォンを掲げるマーケティング部の西尾友希さん

アライシールを貼ったスマートフォンを持つ西尾さん


ーー チェリオではこれまでも、匿名の相談窓口の設置や、チェリオ独自の同性パートナーシップ制度の整備など、誰もが働きやすい環境づくりを目指し、様々な取り組みを実施されてきました。2023年には、アライ(理解者)であることを示す「アライシール」の作成を始められましたが、どのような意図があったのでしょう。

西尾友希さん(以下、西尾): 「アライシール」は、社内のカミングアウトに抵抗があるLGBTQ+の方が、周りがアライであると安心できる環境をつくるため、作成しました。このシールは強制するものではなく、あくまで任意で、パソコンや携帯ケースに貼ってもらっています。

目立つシールですので、「そのシール何?」と、社内外でダイバーシティに関する会話が生まれるきっかけになっています。アライであることを表明することは、当事者の社員への応援と共に、アライ社員自身の多様性に対する意識向上にも繋がっていると思います。

レインボーカラーのアライシールを貼った社用パソコンとスマートフォン

実際にアライシールを貼っている社員の社用パソコンとスマートフォン

ーー チェリオでは2016年から「LGBTQを知ってみよう」という社内報のコラムも継続されているほか、2017年からは、LGBTQについて理解を深める社内研修を始められました。こうした従業員に対する継続的な啓蒙活動の成果を感じることはありますか。

西尾: はい。チェリオでは毎年、「LGBTQ」という言葉に対する認知度アンケートを行っているのですが、「LGBTQという言葉の意味を知っている」「LGBTQという言葉の意味を人に説明できる」と回答する社員の割合が年々、増え続けています。2016年当初は全体の40%程でしたが、2019年には90%に達し、ここ数年は95%以上を維持できています。

私自身、入社前はLGBTQという言葉を「聞いたことがある」程度でしたが、LGBTQに関する研修や、社内に設置されたLGBTQ+の書籍コーナー、社内報のコラムなどを通じて当事者の方の体験を知り、理解を深めることができました。

TRPへの参加など社外向けの活動も大切ですが、何よりもまず、社内へ伝えていくことで、従業員の皆さんが実生活で多様性を受け入れる姿勢を育むことを大切にしています。それにより、従業員の方からそのご家族やお子さんに、LGBTQ+に関する理解が広がっていくと考えています。

自動販売機を通じて「応援しているよ」の声を届ける

レインボーパッケージのプロダクト

レインボーパッケージのプロダクト

ーー 現在、関西中部、沖縄圏をメインに約3万台を設置している自動販売機では、レインボーパッケージの「鈴鹿山系の天然水」や「ライフガード」など、LGBTQ+コミュニティを応援する商品を多数、展開しています。どのような反響がありましたか。

西尾: はい。SNS上で、「いつも応援してくれてありがとう」や、「ライフガードがレインボーパッケージになってる!」といったお声を沢山頂きました。自動販売機にひとつでもレインボープロダクトが入っていること応援しているという気持ちが伝えられているのかもしれません。

また、「のんでCHANGE!参加型自動販売機」という売上の一部がプライドイベントの応援に充てられる自動販売機を置いてレインボープライドを応援するプロジェクトも行っています。このプロジェクトは、身近にある自動販売機を通して当事者の方に「いつでも応援しているよ」というメッセージを24時間お届けしたいという想いから誕生しました。

「のんでCHANGE!」自動販売機は、通常の自動販売機と違い、レインボーカラーに装飾された自動販売機を置くことで、お客様に多様性について「知るきっかけ」を提供し、また、購入を通じて誰もが気軽にプライドイベントを応援でき、間接的に参加できます。

「のんでCHANGE」のメッセージが掲げられたチェリオ自動販売機

「のんでCHANGE!」自動販売機

ーー 「のんでCHANGE!」自動販売機は、どのような企業が導入しているのでしょう。

西尾: 多様性への取り組みが充実している大企業様より、社内でダイバーシティに関する理解を促進したいが、何から始めればよいかわからないという中小企業様に導入して頂くことが多いです。

自動販売機を導入された企業様から、「1台だけやけに目立つレインボーカラーの自販機があることで、従業員だけではなく、社内に出入りする他社の人ともダイバーシティに関する会話が始まるきっかけになっている」というお声も頂いています。

これからも、日本中が多様性に溢れるような社会を目指していきたい

東京レインボープライドに参加した従業員の集合写真

「東京レインボープライド」に参加した従業員

ーー TRPの今年のテーマは「変わるまで、あきらめない。」です。チェリオとして、また、西尾様として、今後、LGBTQ+の認知拡大に向けて、諦めずに継続していきたいことはありますか。

西尾: チェリオとしては、全国各地でLGBTQ+コミュニティを応援していきたいと考えています。チェリオ自動販売機などを通じて、無関心層の方に関心を持っていただく、「はじめの一歩」を生み出すことを目標にしています。

また、全国各地のプライドイベントも一層盛り上げていきたいです。「東京レインボープライド」は23万人近くを動員する非常に大きなイベントですが、地方でも数多くのプライドコミュニティがイベントを開催しています

チェリオでは「東京レインボープライド」だけではなく、地方のパレードへの従業員の参加も呼びかけており、ご家族も一緒になって参加しています。2023年は金沢、奈良、和歌山といった各地方の13団体へ協賛し、今後も積極的に応援します。

個人的には、以前の私のように「LGBTQ+」という単語は知っているけど説明はできないといった方に向けて、まずはLGBTQ+について理解を深めるきっかけを提供したいです。私にも当事者の友人がおり、おそらく様々な不安があるなかで私を信頼して相談してくれたことがとても嬉しかったです。チェリオも、当事者の方が信頼できる企業を目指すことが大切であると感じています。