レインボーカラーを連想させる「ぷよぷよ」が生み出す無数の笑顔。より「外」へと広がるセガサミーグループの取り組み
昨年の東京レインボープライド2023において、初のブース出展を行ったセガサミーグループ。おなじみの人気ゲーム「ぷよぷよ」のキャラクターとともに撮影できるフォトブースは人気を呼び、2日間で約1500名の参加者を記録した。
ブース出展をはじめ、企業横断勉強会の開催や、「誰でも手に取れる」基礎知識を盛り込んだハンドブックを制作するなど、社内にとどまらない取り組みを続けてきた。この一年の活動と、その先に見据えるものをセガサミーホールディングス サステナビリティ本部の石井優貴さんと坂田庄司さんに伺った。
左:セガサミーホールディングス株式会社 サステナビリティ本部 サステナビリティコミュニケーション部 石井優貴さん/右:セガサミーホールディングス株式会社 サステナビリティ本部 サステナビリティ戦略企画部 坂田庄司さん
「皆さんの笑顔が本当にすごく素敵で…」
TRP2023のブース出展を振り返って
ー昨年、2023年の東京レインボープライドに企業ブースを初出展されました。
坂田庄司さん(以下、坂田) 2019年から東京レインボープライドに協賛をしていましたが、コロナの影響などもありブース出展が叶わず、「ようやく出展ができた」という思いでした。
それまで社内でアライの輪を広げる取り組みとして、オンライン研修を実施したり、自社のレインボーロゴが入ったネックストラップを社員に配るなど理解・浸透に力を入れてきました。そうした活動を通じて理解が広まっていることを肌で感じていたため、セガサミーグループの取り組みについて、お客様にも知ってもらう場を待ちわびていました。
ー昨年のブースはどのような企画を行ったのでしょうか。
石井優貴さん(以下、石井) 昨年のブース出展では2つのコンテンツを出展しました。一つはフォトブースで、レインボーロゴをちりばめたパネルをバックに、セガのキャラクターである「ぷよぷよ」のぬいぐるみを持っていただいて、来場された方の写真撮影を行いました。もう一つはレインボーのソファーを設置して、携帯電話の充電もできるようにした「休憩所」です。
ーブースを開放しての休憩所とは珍しいですね。
石井 出展経験のある他社の方にお話を伺ったところ、来場者が多く、なかなか一息つけるスペースがないということをお話しされていました。体力がない方でもイベントを楽しんでいただけるよう、当社のブースで少しでも休憩できる場所を提供しようと企画を決めました。
坂田 どちらもブースとしてはシンプルなもので、皆様によろこんでもらえるか正直不安でしたが、はじまってみればお客様が「セガのぷよぷよだ!!」とニコニコしながら来てくださいました。私はもともとセガの出身なので、そういう反応が嬉しくなってしまって。
石井 坂田さんはぷよぷよを抱えながらひたすらお客様へ呼び掛けては写真撮影のお手伝いをしてくれました。そして当日のシフト時間が終わっても最後まで残っていましたね(笑)。
坂田 皆さんの笑顔が、本当にすごく素敵で……。そんな姿を見ていると、一人でも多く写真を撮ってあげたくなり、気づけば休憩時間も忘れて撮影をしていました。
そうする中で、この企画のさりげないメッセージを感じることができたんですね。「その自分らしい素敵な笑顔を大切にしてください、そのためにセガサミーグループも応援しています」という自分なりの解釈ですが。国籍や性別・年齢も本当にさまざまな方が来てくださって、グローバルに事業を展開する企業として弊社が社会に与えている影響の大きさを改めて認識した機会にもなりました。
石井 余談ですが、セガサミーグループにはたくさんのキャラクターがいる中で、昨年のフォトブースには「ぷよぷよ」を選んだのですが、来場してくれたお客様が「レインボーカラーだ!」と言ってくださって。レインボーフラッグと色は違うのですが、たしかにレインボーカラーに見えるんですよね。老若男女に受け入れられるいいキャラクターだな、と再認識しました。
ー今年もブース出展を予定されていますが、どのような企画を予定していますか。
石井 フォトブースは今年も続けます。またたくさんの光る笑顔に私たちも元気をいただきたいと思っています。
あわせて、「レタールーム」というものを企画しています。私たちのグループ会社が運営する「フェニックス・シーガイア・リゾート」というリゾート施設が宮崎県にあるのですが、そこには「レタールーム」という手紙を書くための部屋があるんです。書いた手紙は送ってもいいし、あてのない手紙として心情を吐露してもいいし、また来た時に受け取れるように保管しておくこともできます。自分自身と向き合い、普段伝えていない思いを伝えられるようなスペースは東京レインボープライドに合うと考えています。
コレクティブ・インパクト型(※1)の活動で
「PRIDE指標」の「レインボー」認定へ
ー昨年における御社の取り組みについて教えてください。
石井 弊社のLGBTQ+への取り組みは2018年の制度改定をきっかけに継続的に行っています。昨年は特にアライを増やし、繋がれる「場」を広げる活動が多かったと思います。東京レインボープライドへのブース出展は特に大きなインパクトがあったと感じています。
また、8月には「LGBTQ+について学び合う企業横断勉強会」というイベントを弊社が運営するコワーキングスペース「TUNNEL TOKYO」にて実施しました。様々な業界から42の会社・団体にご参加いただき、企業の垣根を超えた繋がりを醸成するとともに、ナレッジ・ノウハウを共有しました。
企業横断勉強会の模様
9月には「MY FIRST LGBTQ+ HANDBOOK」という小冊子を制作しました。LGBTQ+に関する基本的な解説や課題、アライとして必要な知識が8ページにまとまっていまして、これは個人・企業どなたでも利用できるように、コーポレートサイトで公開しています。
ー社外、ひいては社会全体に向けた取り組みをされている印象です。
石井 はい。これらコレクティブ・インパクト型の取り組みを評価していただき、11月には「work with Pride」の「PRIDE指標」において、「ゴールド」認定に加え、「レインボー」認定(※2)を取得することができました。
ーすでに「PRIDE指標」では、5年連続で「ゴールド」認定を受けてきましたが、「レインボー」認定を受けることは貴社にとってどのような意義があったのでしょうか。
おかげさまで2019年から「ゴールド」をいただいていまして、私たちがやるべきことはしっかりやれているという自信もついてきたのですが、社内で「やってきたことを展開・応用していかないと発展はないよね」という話が出ました。その一環として目標に掲げたのが「レインボー」認定の取得です。
「レインボー」認定を取得している企業・団体の取り組みを調査・分析した結果、どこも他の企業や団体と協力・協業することを非常に大切にされていたんですね。弊社も社会全体でより良くなるための共通のツールを制作したい、という思いが、勉強会の開催やハンドブックの制作につながっています。
あえての「一般向け」情報で
より広い理解促進へ
ー「MY FIRST LGBTQ+ HANDBOOK」は性的指向や性自認といった基本的な用語解説から「マイクロアグレッション」「アンコンシャス・バイアス」といった身の回りの課題、アライとして気をつけるべきことなど、基礎知識をコンパクトにまとめています。あえて今このような冊子を作ったのはなぜでしょうか。
石井 正直な話、弊社でなくても作れる内容だと思います。私たちが作るのであれば、エンタメ業界に向けた冊子にしたほうがよいのではという意見も最初はありました。ただ、それは今後の目標として、今回はあえて一般向けの内容にしています。
ーハンドブックは表紙にセガサミーグループのロゴが入ったものと、入っていないものが公開されています。
石井 一般向けの内容にした理由としても言えるのですが、これはセガサミーグループの社員に見てもらうだけでなく、より広く、社外の方にも使っていただきたいという思いがあったからです。たとえば私たちと直接面識がない方でも「LGBTQ+に対する取り組みを始めたい」と考えた時に、最初の一歩を踏み出すツールとして手に取れるように、自由に使えるようにということで公開しています。
私たちのような企業がこのような冊子を公開することで、ある種の「とっつきやすさ」もあると考えています。この冊子をきっかけに、たとえばノウハウの共有や勉強会のような取り組みの輪が広がるといいなと考えています。
ー今年の東京レインボープライドのテーマは「変わるまで、あきらめない」です。セガサミーとして変わるまであきらめずに続けていることはなんでしょうか。
石井 セガサミーグループのバリューは「創造は生命✕積極進取」で、もともとセガの社是であった「創造は生命」と、サミーの社是であった「積極進取」を組み合わせたものです。私たちはあらゆる場面において積極進取の精神で感動体験を創造し続けることを心掛けて業務を行っているのですが、それはダイバーシティにおいても同じ気持ちでやっていくべきものだと考えています。
LGBTQ+のテーマであれば、今後も横断的な勉強会などの取り組みを続け、企業集団として社会の底上げをしていく存在になりたいと考えています。
※1 1つの組織では解決が難しい社会問題などに対して、企業や行政など異なるセクターがつながるグループが共通のアジェンダに対して行うコミットメント
※2 「work with Pride」で2021年より新設された、日本社会でのLGBTQ+に関する理解促進や権利擁護において、企業や団体が果たす役割や存在感が増していることも視野に入れ、国・自治体・学術機関・NPO/NGOなどとの、セクターを超えた協働を推進する企業を評価する認定