東京レインボープライド(TRP)は、企業によるNPO・当事者団体支援、および両者がセクターを超えた連携・協働をし、さまざまな課題の解決や目標を実現することを推奨しています。

そのきっかけづくり、または具体的な取り組みの一つとして、今年度から、TRP2024の会場内で企業×NPO・当事者団体コラボブースプロジェクトを始めました(プロジェクト概要はこちら)。

今回は、TRP2024にコラボブースを出展したサノフィ株式会社、ブルームバーグ L.P.、EY Japan株式会社、株式会社荏原製作所の4社に、出展のきっかけや目的についてお聞きしました。

【出展企業×コラボレーション団体】
サノフィ株式会社 x まるっとインクルーシブ病院
ブルームバーグ L.P. x TELL
EY Japan株式会社 x GAY GAMES Team Japan
株式会社荏原製作所 x 全国プライドネットワーク

コラボするからこそ、伝えたいメッセージがある

ーー今回、NPO・当事者団体とのコラボブースを出展しようと思ったきっかけや目的をお聞かせください。

 サノフィ株式会社 中村さん

だれもが安心して過ごせる医療機関の実装を目指す「まるっとインクルーシブ病院」の活動を拝見し、当社が目指す医療環境の実現に向けて、製薬会社と医療機関の相乗効果が生まれるブースを作りたいと考えたためです。

製薬会社である当社は、世の中にまだない薬を作り出すイノベーションを起こすために多様な方の意見を取り入れることが欠かせません。つまり、当社にとってDE&Iは経営戦略そのものなのです。

この考えのもと、マイノリティの人々の医療に対する不満を解消する活動「A Million Conversations」を全世界で実施したり、過去のTRPではLGBTQ+当事者の声をブース展示したりしてきました。また、企業の垣根を超え、他の製薬会社4社と合同で当事者の声を医療関係者に届ける「Pharma for PRIDE」の活動も続けています。

こうした活動の根底にある思いと、まるっとインクルーシブ病院さんの活動は共通点が多いと感じました。今回のコラボブースの単発の取り組みで終わることなく、今後もあらゆる形でコラボレーションできるという期待が持てたんです。誰もが安心して受診できる医療環境を整え、多様性がありインクルーシブなヘルスケア業界の実現を一緒に目指したいと考えました。

サノフィxまるっとのみなさん


ブルームバーグ L.P. Hoさん 

当社では2020年から、マイノリティ向けにカウンセリングサービスを提供する団体である「TELL」を支援しており、日本におけるメンタルヘルスの普及に努めています。この取り組みの一環で、TRP2024でコラボブースを出展することにしました。

金融・経済メディアである当社は、永続的なインパクトを創出するために、さまざまな従業員の才能を生かし、社会に価値を届けることを使命としています。こうしたミッションをもつ当社とTELLが力を合わせることで、LGGTQ+への偏見をなくすとともにメンタルヘルスの認知度を高め、インクルージョンが根付くことを目指しています。

TellxBloombergのブース様子


EY Japan株式会社 Wangさん 

EYも以前から香港のGAY GAMESと接点があり、今回のTRPではGAY GAMES Team Japanとコラボブースを出すことになりました。

香港では、EYのLGBT+メンバーおよびアライのネットワーク「Unity」に属する監査チームがGAY GAMESの監査を支援したほか、数年にわたってイベント開催などを通して認知度向上に取り組んできました。また、オーストラリアでの香港のGAY GAMESによるWorld Pride paradeをサポートし、EYのエグゼクティブが登壇するパネルディスカッションも開催しました。

こうしたつながりを踏まえ、TRP2024でGAY GAMES Team Japanとのコラボを希望したのです。


株式会社荏原製作所 西羅さん 

当社は、TRPの営業担当者からコラボブースの提案をいただいたことをきっかけに、「JAPAN PRIDE 30th×全国プライドネットワーク sponsored by PwC Japanグループ, ドイツ銀行グループ and 荏原製作所」というブースを出展しました。

1994年8月に日本初となるプライドパレードが東京で開催されてから30年を記念した特設ブースで、日本国内で開催されるパレード・フェスティバルのプライドイベント主催団体のネットワーク「JAPAN PRIDE NETWORK(全国プライドネットワーク)」と当社を含む3社による合同での取り組みです。

JPNのブース様子

思いをともに、企業の垣根を越えた協力ができた

ーー今回のブース出展を通して、どのようなメッセージを届けたいと考えましたか。また、ブース準備を進める中で苦労した点があればお聞かせください。

 サノフィ株式会社 中村さん

医療機関の受け入れ体制が徐々に整っていることを周知し、誰もが安心して受診できる環境を築いていく私たちの意思を伝えたいと考えました。

LGBTQ+当事者の中には、公の場で性別を問われるなどの心配から、体調が悪くても医療機関にいきたくないと思い、受診を先送りにしてしまう方も少なくありません。これは決してあってはならないことです。

まるっとインクルーシブ病院さんとのブース準備では、今回のTRPだけに留まらず、医療業界と製薬業界が手を取り合って大きなムーブメントを作るにはどのようなメッセージを伝えるべきかを考えることに尽力しました。

大変な取り組みではありましたが、お互いボランティアのメンバーで成り立っていたので、各自がリーダーシップをもって活動できたことに充実感を覚えました。


ブルームバーグ L.P. Hoさん 

私たちは、来場者の皆さんにブルームバーグとTELLのサービスを知ってもらったうえで、メンタルヘルスの重要性や自殺予防に関する情報を提供したいと考えました。

TELLのサービスには、無料の電話カウンセリングや専門家によるセラピーなどがあります。こうした具体的な内容も伝えることで、メンタルヘルスを促進するというTELLのミッション実現を後押ししたいと思ったのです。

TELLとは同じ思いをもっていたので、ブース準備はスムーズに進みました。TRPの規模が年々拡大する中、どのくらいの来場者があるのかと予測しきれないという嬉しい悩みもありましたね。


EY Japan株式会社 Wangさん 

私たちも、コラボレーション相手であるGAY GAMESの活動紹介を行い、LGBT+とAllyのスポーツ祭典の認知を広めるとともに、2026年に開催されるGAY GAMESスペイン・バレンシア大会に一緒に参加できる新規メンバーを募りたいと考えていました。

今までは当社単独でのブース出展でしたが、今回はGAY GAMES Team Japanさんの希望を伺いつつ、私たちが訴求したいポイントをどのようにブースコンセプトやアクティビティに落とし込んでいくか、調整が難しい時期もありました。今振り返ると準備期間も短かったと感じており、もう少し早めに動き出すことで余裕のある準備ができたのではと考えています。


株式会社荏原製作所 西羅さん  

全国各地に拠点がある当社としては、東京だけでなく他エリアの従業員にもエールを送りたい思いがありましたし、各地のレインボープライドとつながりをもてる絶好の機会と捉えました。

当社に限らず、DE&Iの活動はどうしても東京中心になりがちで、地方においてはまだ不十分な点が多く残っています。全国各地で働く当事者のメンバーに対して、今回のブース出展を通して「ひとりじゃない、仲間がいる」ということを伝えたいと思っていました。

ブース準備においては、全国プライドネットワークさんに力強くリードいただいたおかげで、大きく苦労した点はありませんでした。素敵なブースを提供できたことを嬉しく思っています。


各社各様の思いをもとに形作られていったコラボブース。レポート後編では、TRP2024当日の様子をお伝えします!